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文芸提灯展「言ノ葉の灯」 in 東京スカイツリータウン® 開催報告

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開催概要

幻想的な灯の美が詩歌の情景を引きたてる

 日本中の注目を集めた東京スカイツリー開業から早2年。今やすっかりお馴染みの都市景観となったこの美しい尖塔のもと、今年も東京ソラマチにて文芸提灯展「言ノ葉の灯2014」が開催されました。
 東京スカイツリータウンの主要スポットである東京ソラマチは、都内有数の大型商業施設でもあり、週末は多くの人で賑わいます。
 そんなソラマチの5階、Japan Experience Zoneと呼ばれるフロアの一角にあるシックな外装のギャラリースペースが本展の会場です。
 黒枠の格子戸を設えた受付前を通り、左手へと進むと、その奥に照明を落とした展示スペースが広がります。300平方メートルほどの会場内には、春夏秋冬をイメージした4枚のアートパネルが建てられ、それらを取り囲むように詩歌を記した文芸提灯が灯りをともしました。アートパネルはいずれも抽象的な図柄ですが、不思議な造形の灯りが集う光景のなかでは、流れる水のようにも、たちのぼる陽炎のようにも印象を変化させ、神秘的な雰囲気を醸しだしています。総数216点もの提灯の灯りが暗闇をほのかに照らしだし、会場は非日常を感じさせてくれるような幻想的な美しさとなりました。
 今回の展覧会で展示された提灯はすべて、水府提灯の老舗である鈴木茂兵衛商店とヴィジュアルデザイナーのミック・イタヤ氏の共同開発による「SUZUMO提灯MICシリーズ」が起用されています。水府提灯の堅牢さはそのままに、ミック氏が自然界の形をモチーフにデザインしたという現代アートのようなこの提灯シリーズは、本展開催に合わせ、いくつかの新たなヴァリエーションが追加されました。
 愛らしくも斬新な造形の提灯一つひとつには、そのなだらかな曲線に添って、流れるような筆文字で現代詩歌がつづられています。和紙を通して伝わる優しい光が言ノ葉の一語一語をそっと包みこむような温もりを感じさせてくれる仕上がりとなりました。
 また、展覧会には歌人の小島ゆかりさんと俳人の星野高士さんも来場され、文芸提灯を興味深く鑑賞していらっしゃいました。
 昨年の第1回展に続き、今回の「言ノ葉の灯」も心静かに言ノ葉と向き合える、情緒ある文芸展になったといえるでしょう。

人生を偲ばせる温かな灯

 幻想的な青い闇に、水府提灯の灯りがしっとりと並んでいる。よく見るとそれは、鳥の形であったり、雲の形であったり、雫の形であったり。そしてその灯りに、墨書された短歌や俳句や川柳が浮かび上がる。近代以降の活字文化により、ふだんは本や雑誌でしか見ることの少ない詩歌が、こうして提灯の灯りに浮かび上がると、まるで作者の肉声を聴くようになつかしい。

突然の風に風鈴なりてをり見えぬあなたをそばに感じて  青木洋子

紅き梅ひとつほころぶその先に春のひざしの道すぢの見ゆ  落合妙子

若葉風透き通りゐる畑中にさやゑんどう採る姑(はは)のまぼろし  辻明子

 言葉で表現された作品が、言葉では言っていないことまで伝えてくる。たとえば作者が経てきた人生の時間を。多くの人がこの提灯の灯の温かみに足を止め、ひととき歌の声に耳を澄ませてくだされば、うれしい。

小島ゆかり(歌人、「コスモス」選者)

人生を偲ばせる温かな灯

 俳句は極楽の文学と言ったのは高浜虚子。しかしその裏には地獄もあると言うことは表面からでは見えてこないが、作句をすればするほど楽しみまた失望感がわかる。今回の「言ノ葉の灯」は正に極楽の世界。先ずは行なわれている場所が今一番と言ってよい程人気のある東京スカイツリーだから。そしてその奥のスペース634は外の雰囲気と全く違った空間であったからでもある。まさかこんな静かで秘密めいた処があったのかと言う思い。各作品が水戸提灯に書かれたのを一巡するとどの作品も一層輝いていたと思うのは私だけではないであろう。

母と子の目と目で渡る虹の橋  附田チマ

まだ恋と恋とは言へずフリージア  森葆子

 まだまだ気に入った作品は沢山あったがあの提灯に書かれていると別格なものばかり。勿論それぞれ作った方の心が此処にこの時間に集まったからであろう。終わってしまうのが勿体なくなるような極楽の刻(とき)を共有できていつまでも残像に浸っていた。

星野高士(俳人、「玉藻」主宰)

アンケート結果

アンケート結果から

 会場では、来場者を対象にアンケート調査を実施し、計332件のご回答をいただきました。
 このたびは3日間という短い会期ではありましたが、春らしい穏やかな晴天に恵まれて、のべ1525人もの来場者を迎えることができました。開業から2年経ち、東京スカイツリータウンもひところのお祭りのような混雑はなくなったといわれるものの、それでも週末にはスカイツリー搭乗のための整理券が配布されるほどで、都内随一の集客力はいまなお健在です。本展においても、老若男女問わず幅広い世代の方々にお立ち寄りいただくことができました。
 来場者からは、水府提灯について「LEDとは思えない幻想的な光」「家にもひとつ欲しい」などの声が挙がり、伝統工芸の魅力に触れるよい機会としていただけたようです。
 なかでも興味深かったのが「提灯の形と詩歌が合っていた」というご回答の数々。同じ〈鳥〉の形の提灯を用いても、戦争をテーマにした句には平和の象徴である鳩をイメージし、幼子を詠んだ句には雛鳥のイメージを重ねるなど、多様なとらえ方があったようです。
「質実剛健」と評される水府提灯は、けっして華美な工芸ではありません。しかし、そのすっきりとした佇まいには、たしかに日本人の美学を感じとることができます。そこには、余分な言葉を削ぎ落とした詩歌芸術に通じるものもあるでしょう。提灯のうえの言葉はさまざまな情景を喚起させ、鑑賞者の心の一隅を照らしだす灯りとなりえたのではないでしょうか。
 今回もまた、アンケートを通じて「言ノ葉の灯」に多くのご賛同をいただけたことはまことに喜ばしいかぎりです。これもひとえにご参加くださいました皆様のおかげと存じ、あらためて心より感謝申しあげます。

※この展示は東京スカイツリーの運営会社と直接係わりがあるものではございません。

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