イベント情報

トップページ > イベント情報 > 文芸七宝展「言ノ葉の燿」
文芸七宝展「言ノ葉の燿」

開催報告書PDFのダウンロードはこちらから

開催概要

やわらかな七宝の美が詩歌をさらに燿かせる

 2014年10月、秋晴れの心地よい季節を迎えた東京丸の内にて、文芸七宝展「言ノ葉の燿」が開催されました。
 東京駅から丸の内方面へ出ると、すぐ左手に昭和モダニズムの香りを残した白亜の建築が目に入ります。旧東京中央郵便局を一部保存・再生するかたちで建設されたJPタワー KITTEです。2013年のグランドオープン以来、KITTEは「Feel JAPAN」をコンセプトに全国各地の名産品や、日本のモノづくりへのこだわりを打ちだしたテナントを揃え、ほかの商業施設とは一線を画すブランドイメージを確立してきました。
 KITTEの正面エントランスから入館し、エスカレーターで地下へと下ると、すぐ目の前に本展の展示会場である東京シティアイがあります。日本の魅力を発信するためのイベントスペースのほか、観光情報カウンターやカフェを併設したこの施設は日ごろからさまざまな人たちが行き交い、多目的に活用されています。本展会期中は、入口を落ちついた雰囲気のえんじ色のカッティングスクリーンで飾り、和モダンな設えで往来の視線を集めました。
 なかに入ると、三角柱の展示パネルがランダムに配置され、ところどころに日本の伝統的な吉祥文様である〈七宝繋ぎ〉の模様があしらわれています。白を基調としたこの明るい会場に、前期133点、後期132点もの文芸七宝額が彩りあざやかに展示されました。
 このたびの七宝制作にあたっては、宮内庁御用達でもある老舗七宝店の安藤七宝店にご協力をいただき、詩歌の情景に寄りそうよう考案されたオリジナルの図柄を用いて、一点一点に繊細な細工が施されました。
 有線七宝を中心に、あえて金属線を入れずに釉薬を滲ませる技法を組み合わせるなど、多くの工程を経て、優しい色あいや奥行きある質感が表現されています。色紙や短冊とはひと味ちがった雰囲気で浮かびあがる墨痕が、観る人の心に言ノ葉の一語一語を深く印象づけるかのような、気品あふれる優美な仕上がりとなりました。
 展覧会には、歌人の梅内美華子さんや俳人の小島健さんも来場され、文芸七宝を興味深く鑑賞されていました。
 光を受けてきらめくさまが宝石にもたとえられる艶やかな伝統工芸、七宝焼の魅力に抱かれて、「言ノ葉の燿」はまさに燿きに満ちた新感覚の文芸展になったといえるでしょう。

繊細な美の中に息づく作者の感性

 東京駅丸の内口の顔である白壁の中央郵便局が今「KITTE」となり、清新な雰囲気の中に色とりどりの七宝が並んでいた。水色、黄緑色、薄紅色、うす紫のやわらかなパステルカラー。それらの色彩はガラス質の釉薬から生まれた露や花のようである。日本の四季や風物を代表する梅、桜、あじさい、睡蓮、紅葉、月、富士山、鶴などが描かれ、縁の金色がきらめき凹凸を美しく浮かび上がらせている。そこに墨書された短歌や俳句がとてもうらやましい。工芸の繊細な美の中に息づいているからである。

つゆ草はその名知らずに花びらの藍を極めて露を転がす  貝沼正子

ともすると焦りがちなる私に百合はかおりぬ囁く様に  後藤幸子

砂の手の跡あざやかな胸を張り児らは光りの浜に四股ふむ  真保京子

 作者の感性、命が言葉に如実に表れる、日本古来の詩型をあらためて実感する機会だった。

梅内美華子(歌人、「かりん」編集委員)

おお、七宝焼に輝く俳句よ!

 とにかく、七宝焼と俳句の交響にビックリ! 七宝焼の額絵は輝きとともに、色合いがまた深みを湛え、俳句作品をより光らせていました。その額絵は季節を感じる和調の図柄が嬉しく。中には猫など句の内容に合わせた楽しい絵もあり、ニッコリ。
 私自身も七宝焼の独創的な額で自作を残しておきたいと、心底思ったものです。
 俳句作品は自然、人生、諧謔など幅広く、感銘! 温かい家族詠には心が潤いました。

高原の風に色ありななかまど  中山喜代

教職の重さ白髪野分して  上野蕗紅

正月を故郷に過ごす加賀なまり  谷村亜惟子

 右作品は繊細な季節感を捉えた自然詠と、豊かな人間性が窺われる俳句です。かように、俳句は自分と他人を慰め励ましてもくれます。これが「俳句力」!
 会場はアカデミックな中にも、終始和やかな雰囲気が漂っていました。設営も行き届き、主催者側の細やかな心遣いに拍手!

小島 健(俳人、「河」同人、俳人協会理事)

アンケート結果

アンケート結果から

 会場では、来場者を対象にアンケート調査を実施し、計336件のご回答をいただきました。
 このたびの「言ノ葉の燿」では、前期・後期合わせて1336人というたいへん多くの方にご来場いただくことができました。丸の内という地域柄、平日は近隣にお勤めの方や高年層が多かったものの、休日にはKITTEの客層に倣い、幅広い世代の方々が本展を訪れて詩歌鑑賞を楽しんでいました。また、本展会場は東京駅と地下通路で直結しているという交通の便もあり、会場前の通路には非常に人通りも多く、乗継ぎの合間などで立ち寄られる方もいらっしゃったようです。アンケートでも「立ち寄りやすく、気軽に入れた」「思いがけず喧噪から離れ、ひととき安らぐことができた」などの言葉が数多くみられました。
 来場者のなかには、詩歌と七宝焼の融合という新しい試みに興味をひかれたという方が多く、「短冊ではなく、七宝というのが新鮮だった」「色がきれいで目に留まる」等々、七宝を通して、詩歌に親しむよいきっかけとしていただいたようです。
 日常を詠んだ作品や、美しい風景を描写した言葉は世代を問わず共感を呼び、感動を与えます。アンケートの回答においても、皆それぞれに印象に残った一作を挙げ、ご自身の体験を振り返りつつ感想を記されていました。
 今回、大勢の方々に本展の趣旨にご賛同をいただき、現代詩歌の魅力を存分に楽しんでいただけたことはまことに喜ばしいかぎりです。「言ノ葉の燿」では、七宝焼との融合という新しい試みを通じて、これからの詩歌芸術の可能性に一片の燿きをもたらすことができたのではないかと感じております。最後になりましたが、本展の成功はひとえにご参加くださいました皆様方のお陰と存じ、あらためて心より感謝申しあげます。

お問い合わせフォームへ 電話番号:03-5774-7321