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終戦70年平和祈念「平和の言ノ葉」作品募集

終戦70年平和祈念「平和の言ノ葉」受賞作品発表!

終戦70年を迎える今年、平和の尊さをあらためて伝えたいとの思いから、「平和」をテーマに短歌・俳句・川柳を募った終戦70年平和祈念「平和の言ノ葉」。小社初の文芸賞となった今回ですが、おかげさまで短歌185点・俳句183点・川柳301点とたくさんのご応募をいただきました。ご応募くださった皆様には、この場を借りて篤くお礼申しあげます。応募作品のなかから、厳選な審査により選ばれた入選作品をここに発表いたします。それぞれに平和への深い祈りが込められた詩歌の世界をお楽しみください。

選考委員

短歌の部:小島ゆかり(歌人、「コスモス」選者・編集委員)
俳句の部:星野高士(俳人、「玉藻」主宰)
川柳の部:尾藤一泉(柳人、「川柳さくらぎ」主宰)  ※各敬称略

短歌の部 選・評=小島ゆかり

短歌の部:総評

平和をテーマに歌を詠むことは、たいへん難しいことです。平和を願う心はすなわち、戦争を憎む心。それはわたしたちみんなの思いですから、どの作品も一人一人の大切な心の声であるのに、結果的には似た言葉、似た表現になってしまいがちです。そんななかで、できるだけ自分に引きつけた作品、あるいは具体的な事実や人物に焦点を当てた作品に注目しました。入選歌に拍手を送りつつ、応募してくださったみなさんに感謝致します。

短歌の部:最優秀賞

広島がカタカナとなる夏の日の静かな雨に濡れる折り鶴 井田寿一 68歳 滋賀県

選評 広島がヒロシマになる8月6日。そのカタカナ表記が象徴する戦争の無惨を、「静かな雨に濡れる折り鶴」に転換して余韻を生み出した。淡々とした表現ゆえに、作者の傷みと祈りの感情が、しみじみと強く心に残る。

短歌の部:優秀賞

アルバムの祖父は変わらず二十二歳学徒動員木枯らしの秋 笠井ゑりこ 48歳 埼玉県

選評 アルバムのなかの祖父は、きっと若々しく凛々しい姿であるにちがいない。それは学徒動員に赴(おもむ)いた22歳の秋だという。「変わらず」という表現に、無言の哀れがにじむ。

老いし母平和の尊さ語り継ぐ悲しみ忘るまじ忘るまじと 吉川弘子 63歳 神奈川県

選評 落ち着いた上句から、「忘るまじ」を重ねる切迫感のある下句へ急展開する。字余りや句跨(くまたが)り・句割れを含む不安定な下句のリズムがむしろ、母の切実な気持ちを伝えている。

爆弾の落ちた同じ日青空に黙禱に脱ぐ俺の野球帽 中野雄介 27歳 大阪府

選評 原爆忌の黙禱をする作者と同じ年代の若い人たちが、その日多く被爆し、また被曝した。「俺の野球帽」という言い方に、若々しい表現の力がある。口語が生きた作品。

短歌の部:佳作

目に見えず有り難しとも思わねど平和がゆえに我生きて在り 満川恒朗 54歳 静岡県 大戦に二度出征し生還す白寿の父や平和祈らん  浦田穂積 65歳 佐賀県 ヒタヒタと戦争(いくさ)の影がしのび寄る今日この頃の国の背後に  上飯坂保 78歳 東京都 人の字を何度も書いて祈る夏世界平和の強き風吹けと  岸野孝彦 59歳 兵庫県 医療や科学技術の発展より戦争止める英知が先だ  草道久幸 60歳 大阪府 墓碑の名をしばし眺めて時を経たビルマに散りし伯父を呼びたる  斉藤恒義 66歳 兵庫県 あどけなく笑みを浮かべて眠る吾子(あこ)平和の時代続けと祈る  佐々木美知子 64歳 埼玉県 わが祖母のまなこくもりて夏ごとに戦死の兄はいづこかと問ふ  澤井みのり 20歳 東京都 わが兄は南の島で戦死せり大学生の孫の年齢(とし)にて  澤田 康 71歳 埼玉県 戦死せし我が子に捧げられしとふ日本人形どれも美し  渋谷史恵 47歳 宮城県 立ち止まり過ぎた時代を振り返る廻る地球を止めないように  志村紀昭 50歳 愛知県 七十年頸椎(けいつい)の弾片(たま)携へて平和の願ひ語り継ぎゐる  鈴木知英子 83歳 奈良県 消えかかるかまどの火を見つめいし戦死公報その日の母は  平 正夫 77歳 千葉県 戦争を論ぜず兵士の日々のみを記せし叔父の薄き自分史  高山 茂 63歳 東京都 一粒の泡を吐いたるランチュウの目を開け眠る終戦記念日  中江三青 67歳 鳥取県 積極的平和主義などあるものかわ戦の臭い強く漂う  幅 茂 60歳 愛知県 ただ仰ぐ知覧の空の恙(つつが)無き特攻菊は花の語り部  原口朝光 74歳 佐賀県 忘れまじあの戦災のあの黒い臭気を放つあの丸太棒(まるたんぼ)  松竹梅 76歳 大阪府 ことも無く家族と過ごす平和な日七十年を経てここにあり  山縣敏夫 69歳 山口県 石橋を軍歌渡っていったきりかの土手にまた彼岸花咲く  山下奈美 42歳 静岡県

俳句の部 選・評=星野高士

俳句の部:総評

「平和の言ノ葉」によせられた多くの俳句を読んだが、どれも心に迫るものばかりであった。中には情が出すぎているものや途中で緩んでしまったものといろいろとあるが、俳句は全てに於て前向きなものの方が読者の心を打つ。この様なテーマのものは昔から沢山作られているが、まだまだ新しい俳句が生まれるのだと改めて思った。写生句、感覚の句と表現は違うが、言葉は皆共通である。一句一句との出会いは限りなく続けていきたいのである。

俳句の部:最優秀賞

七夕に平和を祈る文字光る 塚崎てる子 65歳 大阪府

選評 写生の俳句は、平凡に行く場合と見逃せない場面を的確に捉えているものと二通りあり、勿論後者の方が優れている。この作品も上五中七までは誰でも作りそうだが下五の表現によって甦った。更に言えば「光る」が発見であった。

俳句の部:優秀賞

ひまわりや兵士眠れる空の下  今枝将尚 57歳 岐阜県

選評 沖縄辺りか広島か長崎か。何れにせよ、季題の「ひまわり」が鮮烈に目に入って来る。下五も「土の下」では飛躍がなく、「空の下」と言って一つ抜け出した作品になった。

炎天や明日無き鳩の飛び立ちぬ  近藤国法 74歳 宮崎県

選評 鳩は平和の象徴でもあるが、炎天の中を去って行く鳩を見ていると本当に明日がないとも思った作者。上五の「や」の切字が全体を引き締めていて情感が一層でた作品であった。

熱い水蛇口の先の広島忌  藤井茂基 62歳 広島県

選評 やや破調の一句であるが、却ってこういった内容が引き立った。また「蛇口の先の」とは大胆な場面と表現である。屹度当時の模様も描かれていて臨場感が伝わってきた。

俳句の部:佳作

野火の声修羅の嘆きを聞けぬ今  荒木光弘 59歳 東京都 風化せぬ悲しみもあり蝉の殻  井田寿一 68歳 滋賀県 微笑む娘(こ)今生の別れピカの朝  井上陽呂史 51歳 広島県 青葉風訓練のなき学舎(まなびや)に  亀谷侑久 71歳 京都府 戦争の終りし国の雲の峰  菊池正男 85歳 千葉県 五月雨(さみだれ)が歳月洗う慰霊の碑  坂本洋一 53歳 大分県 がぶがぶと水飲んでいる原爆忌  佐藤志乃 64歳 群馬県 八月や孫の遊べる飛行帽  澤井みのり 20歳 東京都 平和とは命の重さ桜咲く  鈴木実 53歳 山形県 八月や皆おごそかに黒を着て  竹澤聡 51歳 神奈川県 梅雨明けて沖縄の空静かなり  中村宏 55歳 兵庫県 戦死者の魂悲し夜光虫  細川岩男 70歳 埼玉県 人の世を清めたまひて散る桜  前田信夫 68歳 兵庫県 見上げれば平和のままのいわし雲  枡田美子 60歳 熊本県 戦争は起こしちゃならぬ鯉幟(こいのぼり)  松下弘美 53歳 兵庫県 産声に誓ふ不戦や夾竹桃(きょうちくとう)  宮崎早苗 67歳 香川県 十薬の白き十字に平和在り  村島麗門 61歳 大阪府 満州に生まれた朝の息白し  山縣敏夫 69歳 山口県 花守は戦を知りし地蔵尊  山下奈美 42歳 静岡県 蓮の花平和の祈りを込めて咲く  脇川一也 51歳 愛知県

川柳の部 選・評=尾藤一泉

川柳の部:総評

「平和の言ノ葉」という公募は、日本の周辺事情と政治情勢を思う時、文芸においても重要なテーマでしょう。多くの「平和」に対する「思い」が寄せられました。ただ、残念だったのは「標語」的な平和へのアピールが多く、文芸にまで昇華する技量不足のものが大半でした。「川柳」は今年、文芸形式を確立して250年の節目を迎えます。そこで標語的な平和のスローガン作品ではなく、時代を捉えた作者の心理の見える句を中心に推薦しました。

川柳の部:最優秀賞

かけっこのゴールは平和 よーいどん  藤井麻友 18歳 広島県

選評 「かけっこ」の響きは、運動会などの競技ではなく、勝っても負けてもの楽しみ。軍拡という「競技」は、常に勝敗を見据えた価値観。幼き日の心で臨めば、肌の色やコトバを超えての平和へ……。若き作者の「よーいどん」は希望に満ちている。

川柳の部:優秀賞

七十年 六日九日十五日  髙塚鎭昭 69歳 長崎県

選評 数詞を4つ並べただけの構成ですが、「六日」「九日」「十五日」というだけで、日本国民が追い求めてきた平和への思いが感じられます。隣国に「日本軍国主義」などと言われますが、日本の戦後70年の思いは、この句に尽きるでしょう。

蚊の様にドローンが落ちる平和呆け  松川幸江 81歳 埼玉県

選評 現代日本社会の「平和ボケ」を批判する代表句として、時事性の強い「ドローン」を描いた一句。国や官邸、警察の後手後手の対応自体が、「国民の平和ボケ」以上に危機意識を感じたのは私だけではないでしょう。時事風刺としての秀作。

ボケまいぞ平和も人も高齢期  松竹梅 76歳 大阪府

選評 「平和ボケ」の句が多い中、日本の高齢化社会と平和を重ねたこの句は、戦中派である作者の「覚悟」にも似た意思が伝わってきます。戦争を知った者の高齢化とを描く事で、戦争を知らない若者の増加への懸念が言外に感じられます。

川柳の部:佳作

語り部を継ぐ若者がいる平和 海老原順子 60歳 茨城県 古希だけど専守防衛白寿まで 鎌田誠 67歳 北海道 平和ボケ積んだ足場が崩れ出す 神馬せつを 67歳 石川県 むすび食う孫の足元鳩の群れ 小池進 65歳 神奈川県 W杯眠れぬ夜は平和なり 近藤和子 85歳 大阪府 民守る憲法を民守らない 佐々木美知子 64歳 埼玉県 腕のなか三千グラムで知る平和 曽我匡史 24歳 東京都 九条を安眠させぬ安保法 田村常三郎 81歳 秋田県 願いごと二番目以下の平和かな 塚崎てる子 65歳 大阪府 暴走族平和な日本なればこそ 辻本直子 47歳 石川県 シャボン玉戦争知らない息ばかり 中江三青 67歳 鳥取県 祈るしかできない国の反戦歌 中川潔 50歳 福井県 「戦争は…」祖母の背筋凛として 中野雄介 27歳 大阪府 七十年平和を古稀にせぬ覚悟 夏田信身 81歳 大阪府 平和ボケそんなボケならウエルカム 西原悦郎 61歳 栃木県 気が付けば戦場に居た平和ぼけ  細川岩男 70歳 埼玉県 足下にあった平和の崖っぷち 宮本晶樹 福岡県 気づかねどYouも世界のワン・ピース 宮本陽子 60歳 神奈川県 鐘が鳴る和平の澄んだ音が響く 鷲尾基也 74歳 東京都 カーテンを開ければ朝のある平和 渡辺廣之 62歳 大阪府
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