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平安神宮奉納小丸屋琳派展「神楽の言ノ葉2015」受賞作品発表!

ごあいさつ

2014年秋、京都・平安神宮に現代詩歌を奉納する史上初の試みとして開催された「神楽の言ノ葉」。その好評を受けて今年11月、ふたたび平安神宮にて「神楽の言ノ葉2015」が開催される運びとなりました。今回は展覧会を彩る短歌・俳句・川柳作品を広く一般からも公募。多くの応募作品のなかから厳選な審査により選ばれた、優美な詩歌作品をご紹介します。なお、各部門の最優秀作品は、京都の老舗「小丸屋 住井」謹製による「文芸うちわ」に仕立てられ、「神楽の言ノ葉2015」に出展されます。

選考委員

短歌の部:小島ゆかり(歌人、「コスモス」選者・編集委員)
俳句の部:星野高士(俳人、「玉藻」主宰)
川柳の部:尾藤一泉(柳人、「川柳さくらぎ」主宰)  ※各敬称略

短歌の部 選・評=小島ゆかり

短歌の部:総評

「神楽の言ノ葉」というタイトルが掲げられたせいでしょうか。美しさや雅(みやび)さを強調するような作品がわりあい多く見られました。もう少し表現を抑えればとてもいい歌になるのに、と見えない作者に心で語りかけたりしながら選をしました。しかし、二度三度見直すうちに、それぞれの作者の、言葉や歌への思いが熱く伝わってきて、改めて感動を味わいました。たくさんのご応募を、ありがとうございました。

短歌の部:最優秀賞

母らしくなってきた子が夏帽子かぶってひとり渡月橋ゆく 中江三青 67歳 鳥取県

選評 母になってから母らしくなるまでには、しばらくの歳月が必要である。長い「渡月橋」をひとり渡ってゆく娘を見つめる、その母の眼差しが深々とやさしい。「夏帽子」がよく生きている。

短歌の部:優秀賞

茶摘女(ちゃつみめ)の話す声して山陰に姿は見えずほととぎす啼く 亀谷侑久 71歳 京都府

選評 ほととぎすは古来、姿が見えず声を待つ鳥であった。そして、その声が聞こえるのは初夏、茶摘みの季節である。茶摘女の話し声と、ほととぎすの啼き声。聴覚の優れた秀歌。

一粒の飯も残さぬ米の国美しい箸使いの技あり 中野雄介 27歳 大阪府

選評 日本最古の歴史書である『古事記』の神話のなかに、すでに箸が登場する。「一粒の飯」も残さず食べる箸使いは、日本の文化そのもの。「美しい箸使いの技」という表現が、文字通り美しい作品。

悠久の空は銀河の通過点神宮で見る満天の星 廣井直美 61歳 神奈川県

選評 悠久と思われるこの空も、じつは銀河の一通過点なのだという。宇宙の営みから考えれば、わたしたちの命はほんの一瞬に過ぎない。一瞬の命のそのまた一瞬のいま、満天の星と出会うすばらしさ。

短歌の部:佳作

御霊屋(みたまや)に深く礼するしきたりを今日も守りつつ古物あきなう 朝日淨慧 60歳 東京都

選評 厳かな言葉のひびき合いに、魅力がある。

悩み持ち訪ねて来たる哲学の道又歩く心軽くし 伊川公司 78歳 神奈川県

選評 「哲学の道」ゆえに、独特の雰囲気が生まれた。

庭の茄子乱切りにしてひとつだけご祝儀ですよ土間の鈴虫 石井かおり 54歳 大分県

選評 土間の鈴虫への、親しい語りかけが楽しい。

社務所いま固く閉ざされ夏草の生いたる中に咲く花茗荷 井田寿一 68歳 滋賀県

選評 上句の寂しさに、花茗荷がやさしく点るようだ。

私の手あなたの手にふれ合うと楓の影が二人を包む 大谷仁志 32歳 三重県

選評 「楓の影」に情感がある。「あなたの手と」の方が自然ですね。

豪雪もようやく消えて境内に幟(のぼり)はためく今日春祭り 小野沢竹次 68歳 長野県

選評 雪でなく「豪雪」に、風土を伝える言葉の力がある。

回遊の庭ゆく父母のゆっくりと湖面静かに待つ金閣寺 鴨志田和子 62歳 東京都

選評 湖面に映る金閣寺を想像させるところが、とてもうまい。

ふるさとの青田に集う白鷺の飛び立つ夕べ藍に染まりぬ 北内康文 61歳 徳島県

選評 色彩感と、時間の感覚がゆたかな一首。

参道の遥かさ想ふ神代(じんだい)の森に蜩(ひぐらし)鳴き出でにけり 吉川弘子 63歳 神奈川県

選評 一首のなかに、空間の奥行きが感じられる。

比叡より風が吹き下り稲刈りのすんだ田圃(たんぼ)に案山子一ぴき 草道久幸 60歳 大阪府

選評 リズムの緩急が魅力的。「案山子ひとり」の方がしっくりしますね。

里山の柚子色冴ゆると便り来ぬ七十路過ぎても恋(こ)ゆるふる里 葛岡昭男 71歳 千葉県

選評 柚子の色が効果的。「恋ふる」の方が適切でしょう。

底冷えの京都の町をさ迷えば湯豆腐の湯気やさしく包む 佐々木美知子 64歳 埼玉県

選評 冷たい空気と、湯気の匂いまで伝わってくる。

灼熱のアスファルトにふれ犬に説く夕方の散歩は今日も夜10時 田所優子 39歳 千葉県

選評 現実感があって心に残る一首。具体が生きている。

怒らずに叱ってくれた母がいた割烹着似合う戦前の母 中野康子 59歳 大阪府

選評 怒ることと叱ることは違う。一首の展開に工夫がある。

京都路の小さき流れ手を入れてああ冷たしや体が静か 中村和雄 80歳 千葉県

選評 結句の表現「体が静か」が、意表をついて卓抜。

残り福たこ焼き買うて帰る道トートバッグに福笹はみ出す 中村健治 43歳 滋賀県

選評 関西弁の親しさに、「福」が宿るようなおもしろさ。

言霊(ことだま)の幸(さき)わう国に六十年生きて三十一(みそひと)文字に親しむ 藤林正則 60歳 北海道

選評 万葉の一首を本歌取りして、ゆったりと詠んだ。

擦れ違う日傘たがいの道ゆずり影は優しく揺れて弾みて 舛田美子 60歳 熊本県

選評 日傘のやさしい動きと影が、よく見えてくる。

白髪の母が少しく若返る時の流れの茅(ちがや)の輪の向う 松下弘美 53歳 兵庫県

選評 母の姿が、不思議な時間のなかで捉えられている。

文化とふ言葉自体が文化なりこの国に生きこの国で聞く 松本俊彦 50歳 京都府

選評 なるほど、と膝を叩いた。内容を生かすリズムもすばらしい。

俳句の部 選・評=星野高士

俳句の部:総評

数多くの作品の中でも自己表現が客観的に伝えられるかが一つの選句の基準になった。しかし乍ら素直に表現されていることも佳句との境目であることは「神楽の言ノ葉」の作品の印象は大変な収穫があった。俳句は座の文芸と言われているように作者と読手が共有できる感動が沢山あった方がよいのである。また佳句がいつ授かるかは安定した句心を常に持っていればこそのものだ。

俳句の部:最優秀賞

まだ少し少年の目でとかげ見る 坂井傑 44歳 埼玉県

選評 俳句の重要なのはやはり季題。この作品も蛇や他のものでは内容と違ってくるので「とかげ」が少年の目と一致する。何よりも作者のまだ若いんだという心意気に打たれた。

俳句の部:優秀賞

神苑の時うつろいて花菖蒲 浦田八重子 85歳 広島県

選評 いかにも気持ちが整っている一句。神苑に咲く花菖蒲を見て時のうつろいを感じたところで心情をうまく伝えることが出来た。

鶯の誉めれば長き声となり 北内康文 61歳 徳島県

選評 本当にこの通りであり、ほめたことが鶯にも伝わっているかのように応じて長く鳴く。ゆとりのある一句であり、気持ちが溢れていた佳吟。

言の葉を紅葉(もみじ)に染めて京さんぽ 西川祐代 72歳 石川県

選評 京都を歩いていると、いろんなものを授かるような気がする。言の葉も魂が宿っているのだが、そんな言の葉という見えないものを染めあげる京の紅葉は絶景であろう。

俳句の部:佳作

依代(よりしろ)に爪立てにけり蝉の殻 安藝達也 41歳 徳島県

選評 蝉の殻になっても必死なところがよい。

七夕や何が悲しいお下げ髪 石川昇 62歳 東京都

選評 中七が意表をついた。

八月やあかあかと燃ゆ夕の雲 今枝将尚 58歳 岐阜県

選評 八月のどこかに終戦を思い馳せた。

巫女の持つ鈴にも似たる桐の花 岩澤千晶 56歳 兵庫県

選評 神鈴と桐の花の競べ方の妙。

花疲れ千年の古都まどろみぬ 海野兼夫 65歳 埼玉県

選評 大きく詠って作者の情況がうまくでた。

夕刻の京の竹林青嵐 大友美幸 53歳 東京都

選評 何と言っても青嵐がこちらにも感じられる。

万緑に風吹き抜ける京の町 亀谷侑久 71歳 京都府

選評 京の町の雅びさと万緑の勢いがよい。

今年また京の新茶をあのかたへ 川畠紀子 61歳 新潟県

選評 挨拶の一句だが新茶が利いている。

帰省子に茶を汲む母のよく笑ふ 岸野由夏里 39歳 京都府

選評 仲睦まじい場面が伝わってきた。

風入れの秘仏に会へり女坂 吉川弘子 63歳 神奈川県

選評 こんな偶然をうまく捉えました。

頭(こうべ)たれ鳥居くぐれば蝉時雨 桐山榮壽 58歳 東京都

選評 季題の飛躍が一句を確かなものにした。

木洩日に黒揚羽舞ふ神の庭 近藤國法 74歳 宮崎県

選評 下五の場所の設定が値あるものにした。

京の寺そっと外してサングラス 佐々木美知子 64歳 埼玉県

選評 サングラスは堂々とかけていたいが京の寺では。

水打ちて空の青さを浄化せり 鈴木実 54歳 山形県

選評 天と地の時間を一体化させ一句に昇華できた。

神宮の空にあざやか虹の橋 塚崎てる子 65歳 大阪府

選評 何か言いたいことがあった筈。

初蝶が横切ってゆく先斗町(ぽんとちょう) 中江三青 67歳 鳥取県

選評 初蝶に先斗町だけでも楽しい。

名月がゆるりと渡る嵐山 中村宏 55歳 兵庫県

選評 一幅の絵のような場面をよくまとめた。

一雨に光をゆらす夏木立 洞口武雄 79歳 岐阜県

選評 中七でこの作品が浮き立った。

見上げれば京都タワーに鰮雲(いわしぐも) 山縣敏夫 69歳 山口県

選評 京都タワーは実に懐かしい。しかし都だ。

天地(あめつち)に言霊(ことだま)のあり杜若(かきつばた) 和田康 57歳 奈良県

選評 取り合せが詩として伝わって来た。

川柳の部 選・評=尾藤一泉

川柳の部:総評

今回の作品は「平安神宮奉納」という〈慶祝吟〉としてふさわしい作品が求められたが、集句の多くは、その意図を十分に反映していないものが多かった。また、川柳としての形式(17音)と内容(人間)が整っていないものも多く、佳作の半分以上は、残念ながら水準を超えていない。そんな中から推薦するのは心苦しかったが、集句中の相対評価として位付けを行った。他の文芸と異なる〈川柳性〉が際立つ作品の登場を望む。

川柳の部:最優秀賞

さすが京都上(あが)っても下(さが)っても歴史 今岡久代 88歳 沖縄県

選評 「上ル」「下ル」は、他所者にとって迷惑な表示だが、千年の御所を中心とした文化が沁みている。道ばかりか、時代を「上っても下っても」この地は日本の中心であった時間が長く、これを外して歴史は語れない。

川柳の部:優秀賞

神様も微笑む絵馬の五・七・五 井田寿一 68歳 滋賀県

選評 京都に限ることではないが、奉納絵馬を目にして、つい微笑みを覚える願い事に出遭うことがある。まして、17音での願いは「川柳ブーム」の今日の風情でもあるだろう。

千年の都を洗う人の波 北内康文 61歳 徳島県

選評 かつて都に集まってきた人々、今日、いにしえの都を訪ねる人々。訪ねる目的は変っても、千年の都へ人を向かわせる魅力がそこにある。「千年の都を洗う」のフレーズがいいだけに、「人の波」がやや安直だった。

京の道異国の人に問う時代 中村宏 55歳 兵庫県

選評 川柳らしいアイロニーの一句。インターネットを通じた観光情報は、なまじっか知ってるつもりの日本人より詳しく、穴場情報にも通じている。この句が現実味を帯びているのも、実体験からの句だからであろう。

川柳の部:佳作

失敗も演技のうちの猿回し 石川昇 62歳 東京都

選評 所詮人生も猿回し。猿回しの笑いを取る失敗演技も予定上なら、人生の失敗だって笑って乗り越えよう。

お参りで私と京の縁絆 井上一男 80歳 兵庫県

選評 「縁」「絆」と二つ持ち出したが、音を合わせるのに用いたようで、どちらかに絞って構成した方がよかった。

うちわうち神の御手(おんて)で福を呼ぶ 上田公美彦 84歳 三重県

選評 「うちわうち」とは、同人雑誌のサークル名ではあるまいが、ちょっと想像の翼が伸びる一句。

京巡り古刹で四季を観る至福 神馬せつを 67歳 石川県

選評 これも比較的常套の発想による作品。「京」の「古刹」の「四季」の「至福」という繋がりには「曲」が無い。

米朝の「はてなの茶碗」京なまり 川畠紀子 61歳 新潟県

選評 上方落語の名調子が聞こえそうな一句。古き良き高座の思い出は、多くの心にまだ残っている。

おこしやす旅に染み入る京言葉 川脇萌 32歳 大阪府

選評 京ことばの響き、気分が感じられるが、やや既成概念としての発想は同想句を生みやすい。

大仏の手の流星を掬(すく)ひたし 岸野由夏里 39歳 京都府

選評 この流星は、読み手の経験によって異なって見えよう。掬われ難いからこそ下五に思いがつのる。

寄り添っておかめひょっとこ京巡り 北村純一 70歳 神奈川県

選評 京の雅人から見ると、鄙からの観光客はこんな風に見えるであろう。自嘲とも取れるユーモア。

太秦(うずまさ)でタイムスリップ京の旅 佐々木美知子 64歳 埼玉県

選評 太秦の映画村も観光スポットのひとつ。旅人の軽い満足感が伝わってくる。

祗園さん朱塗りの朱まで艶っぽい 志村紀昭 51歳 愛知県

選評 一句として祇園の気分が伝わってくるが、17音での説明の域を出ない。描写体で描くと句は広がる。

夕暮れの四季折々な京の顔 戸塚菜緒 28歳 静岡県

選評 「京の顔」を「奈良の顔」「江戸の顔」としても成立しそうな動く作品だが、相対的に見れば出来ている一句。

清水の舞台から飛ぶ赤トンボ 中江三青	 67歳 鳥取県

選評 「赤トンボ」が動く句。またトンボと言えば「飛ぶ」と言わずともイメージできた。多少だがニンゲンが重なって見えるのがいい。

神楽女子恵比寿まく餌(え)にもつれ合い 花本正昭 73歳 島根県

選評 「神楽女子」も「リケ女」や「歴女」のように周知され、ますます今どきの女子力を感じる一句。

玉砂利を踏みたいと孫駄々をこね 原峻一郎 84歳 佐賀県

選評 平安神宮の玉砂利だろうか。玉砂利を踏む着飾った子供の姿が目に浮かぶ。

京ことば雅(みやび)のなかに凛として 外村有弘 62歳 神奈川県

選評 「京ことば」とは、こういうものということを言った句で、そこに人間の影、作者の影が描かれると、も少し深い句になったろう。

おいでやす仏と神にふれる旅 増島淳隆 81歳 東京都

選評 京コトバが、旅の気分を髣髴させる。口語発想、口語表現は、江戸期から川柳表現の特長のひとつ。

哲学の道古(いにしえ)へ通りゃんせ 松川涙紅 80歳 埼玉県

選評 西田幾太郎に思いを馳せたりすると、思考がこんがらかってきそう。実際の京の道は、四季に魅力有り。

崩れても真白き湯豆腐でいたい 松下弘美 53歳 兵庫県

選評 明治以降の川柳表現における内面の風景化。「白い」と「豆腐」の関係がやや常套的だったのが惜しい。

神宮に祈る反戦がんこ者 山﨑秀雄 60歳 埼玉県

選評 こんな人がまだ居るからこその平和。ただ、「神宮」に祈るというだけでは、句が動いてしまうのが惜しい。

今日もまた言霊(ことだま)信じ神頼み 和田康 57歳 奈良県

選評 「言霊信じ」るから「神頼み」という語順の報告句になっているが、言霊が神を生かしているといった捉え方で作れれば、もっと句が広がってくるだろう。

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